約3カ月で自走するエンジニアを育て、開発を内製化へ 〜大手通信企業、銀行などが参加する研修とは?〜

June 21, 2024

2024年2月26日、数社合同でソフトウェアエンジニアのアップスキリングを行う研修『Open Course(オープンコース)』の成果発表会「Demo Day(デモデイ)」が行われました。

この研修は、約3カ月かけて最新のウェブ開発で使われている技術やフレームワークに加え、テスト駆動開発(TDD)など、フロントエンドからバックエンドまでをカバーするITスキルと、エンジニアに必要なプレゼンや、アジャイル開発のスキルなどを身につけられるシリコンバレー式。最後にはMVP(Minimum Viable Product、実用最小限の製品・機能)を作ってプレゼンまで行う、とにかく実務に即した内容が特徴です。

多くの方に驚かれるのが「答えを与えない」ところ。開発現場では、どんどん新しい言語や技術が入ってきます。それに対応する力をつけてもらうべく、インストラクターはヒントを与えたりサポートをしますが、決して「こうしましょう」などとは言わないんです。

他社の方たちと一緒に研修を受けられることも、ユニークなポイントの1つ。

今回は、大手通信会社、大手銀行、大手基幹業務開発会社から、11人の方が参加されました。

それぞれの会社のメンバーをバランスよくミックスされるよう3チームに分け、約10日でウェブアプリケーションを開発。それぞれのチームが開発したものを見ていきましょう。

1. チーム:ちいかわ『ほほえみ Navi(ナビ)』

単身高齢者で移動式スーパーマーケットを利用している方用の見守りアプリ。

移動スーパーの販売員の方、対面時に気づいた点やお話ししたことなどをアプリに入力。家族はそれを見ることで生活の変化や安否の確認ができるというもの。

単身高齢者さんは、買い物をする際に、アプリの会員証を見せる。

店員さんは、アプリから様子やコメントを入れられ、家族はご家族の様子を知ることができます。この3者がみんな笑顔になるということから「ほほえみ Navi」と名前にしたのだそうです。

カレンダー形式でもどんなご様子かが表示されます。

直感的に使いやすいUIになっています。

システム構成にはFlutter(Dart)などを使用。

メンバーは

「お互いのことを知らない状態でチームを組み組んだため、心理的安全性を作れたらいいなと取り組んだ」

「雑談をする時間も作って和気あいあいと行い、時間をかけてじっくりとペルソナを作ったのがよかったのかもしれない」

「経験のない言語を使ったので、ライブラリの概要を把握するため言語が説明されている動画を見るなど工夫した」とコメントしていました。

2. チーム:UCHIRAN’CHI(うちらんち)『ワクワクぬりえジャーニー』

AIが生成した絵から塗り絵を作れる子ども用アプリ。

家事をしている際などは子どもにYouTubeを見せているけれど「受け身なものよりも自分で考える遊びをしてほしい」という思いから着想。ジャンルを選択すると、生成AIが3つのイラストを作成、中から好きなものを選んでぬりえを作ります。

毎回違ったもので遊べるのが特徴で、子どもたちのワクワクに寄り添いたい、というコンセプトから、UIもかわいらしく、かつ幼児でも操作しやすいものになっています。

タブレットでの使用を想定し、OpneAIを使用し実装。最新のイメージを自動的に保存し、不要なイメージをアーカイブするAmazon Elastic Container Registry(アマゾン エラスティック コンテイナー レジストリ:ECR)も用いました。

メンバーは

「プロンプト(指示や質問)を工夫しないと思ったような画像が出ない」

「ローカルで動くものはすぐにできたが、デプロイしたら動かなくなった」

「ドキュメントを残すと、メンバーの効率が上がることなどがわかった」

「技術面でも、コミュニケーション面でも学ぶことができた。一緒に考えて、意見を出しやすい雰囲気だったのがよかった」

と振り返っていました。

3. チーム:おとうさん『Stylista-I(スタイリスタ-アイ』

お客さまの顔の形を考慮したヘアカットのイメージを提案してくれるアプリ

美容院で指定した髪型が自分の顔の形に合うかわからない。仕上がりがイメージと違う!そんな悩みを解決すべく、作られました。

カルテに髪質や顔の形など情報を入力すると

AIが画像を生成します。この画像のおかげで、ユーザー側はより正確なカット後のイメージを把握でき、美容師さん側も「こんなカットにしてほしいんだな」が掴みやすくなります。

タブレットでの使用を想定し、UIは縦型に。

このチームもOpenAIを使用しています。AWSのほか、高速で開発環境を立ち上げられるビルドツールVite(ヴィート)なども使用。

苦労した点は

「画像生成AIでプロンプトを使うが、反映してくれないことがあった。前髪をどう分けるのか、ぱっつんにするのか、などが難しく、画像生成AIの限界を感じた」

「唯一3人のチームだったので、納期割れしないように詰まったところは即相談、その機能を切るなどの決断もした」

と振り返られていました。

研修の主眼はウェブアプリケーションの設計から開発・運用まで全ての行程を手掛けることができるフルスタックエンジニアの養成です。

実際の開発現場でも起こりえることも組み込んだカリキュラムなのですが、皆さんプレゼン時にその点に触れていて

「びっくりして、数分動きが止まった」

「思わず『コードクリサリス、本気だな』と独り言が出た」

「研修でここまでやるのか、と思った」

と苦笑いされながらお話しされていました。

それぞれの企業から事務局さんも参加され

「こんな短期間でリリースまでたどり着いてすごい。『コードクリサリスに行って良かったね』と言われるようになってからが本番」

「しっかり動くアプリケーションを作れたのは達成感になったと思う。内製化をリードするチームに育ってほしい」

「大変と言いながらも、楽しそうにプレゼンしていたのが印象的だった」

「ここで学んだことは部門、チームにフィードバックしてほしい。みんなに刺激を与えてくれることも期待している」

など、感想をシェアしてくださいました。

フルスタックの技術、チーム開発を一通り体験できるこの研修。

今回は

・開発途中での仕様変更によるシステム外注費の増大、外注頼りで開発スピードが遅くなることを解決したい

・ユーザー視点を持ったプロダクト開発、フルスタックの知識を学んでほしい

・短期間でアジャイル開発の実践を積ませたい

などのニーズをお持ちの企業さんが参加されました。

新しい技術や言語を自分で学び、活かす力を持ったエンジニアを育てたいとお考えでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。